なぜ学校ともめるのか。~きっとうまくいく、学校への伝え方~
◆前回の振り返り──なぜすれ違いが起きるのか
前回の記事では、なぜ保護者と学校との間ですれ違いが起きやすいのかを、「指導(教育)」と「支援(福祉)」どちらを重視するかという立場の違いという切り口で解説しました。
保護者が「我が子の困りごとをなんとかしたい」という気持ちで学校に訴えても、学校側から「できません」「それは特別扱いです」といった返答が返ってくることがあります。(保護者の皆さんは、別に特別扱いしてほしいと思っているわけではない場合が多いにも関わらず)
このすれ違いの背景には、「子どもが成長すること」を最優先に考えて対応しようとする一方、「今、苦しんでいる状態をなんとかしてほしい」という“福祉的な支援”を求めているという立場や視点の違いがあります。
もちろん、どちらの視点も大切です。今回は、この両方を大切にしながら、「では、どうやって学校に伝えたらいいのか?」をより具体的にお伝えしていきます。
◆伝え方次第で、関係は好転する
学校と話すとき、「何を言うか」も大切ですが、それ以上に大切なのが「どう伝えるか」です。
関係が良くなれば、子どもにとっても大きなプラスです。
「こんなふうに配慮してほしい」「こういう支援があれば…」と要望を伝えるとき、つい気持ちが前に出すぎてしまったり、逆に遠慮して言葉足らずになったりするものです。そこで、まずは“やってしまいがちなNGパターン”から整理してみましょう。
◆やってはいけない伝え方4選
①要望だけを一方的に伝える
例:「授業中に当てないでほしいんです」「体育は見学させてください」
これでは、「言いたいことは分かるけれど、なぜそうしてほしいのか」が伝わりません。学校としては「なぜそれが必要なのか」という理由がないと動きにくいのです。結果として、「配慮=特別扱い」と見なされ、前向きな返答を得られないことがあります。
②学校に丸投げする
例:「なんとかしてください」「どうすればいいか教えてください」
真剣に悩めば悩むほどどうしていいかわからなくなりがちです。もちろん、頼ることは悪いことではありません。ただ、子どもを育てるのは家庭と学校の両方です。「うちではこう関わっています。学校でもこういうサポートがあればありがたいです」という協働の姿勢が、学校との信頼関係を築きやすくします。
- 子ども本人を置き去りにした話になる。親と学校(大人だけ)で決めてしまう
例:「この子もそう望んでいるはず」「子供には聞いていないが、同じこと言うはず」
親は最も近くで子どもをみていますので、「この子ならこう思うはず」と考えるのも当然です。しかし、自身の子ども時代を振り返っても、親や学校が100%理解することは難しいです。何といっても中心は子どもです。学校も子ども本人の意思が見えないとなかなか動きづらい面もあります。
④感情的になってしまう
例:「もう限界です!」「どうして何もしてくれないんですか?」
保護者が感情を爆発させると、学校側はまずその感情をなだめることにエネルギーを使ってしまい、肝心の話が進まなくなります。話が止まるばかりか、対立構造が生まれてしまうこともあります。
◆では、どう伝えたらいいのか?
では、具体的にどう伝えれば、よいのでしょうか。
ここで大切なのが、「指導(教育)の視点」と「支援(福祉)の視点」のバランスを意識することです。
例としては、このような感じです。
「うちの子は集団での発表がとても苦手で、現時点では手が挙げられません。なので、授業中に指名されることに大変抵抗があります。ただ、将来的には自分の考えを言えるようになってほしいと思っています。今はそのステップとして、いきなり指名するのではなく、列の最初からあてるなど、本人が次に指名されると心づもりができるかたちから始めさせていただけないでしょうか。」
あるいは、保護者としてもどんな支援すればいいのか分からないときには、こんな感じです。
「うちの子は集団での発表がとても苦手で、現時点では手が挙げられません。なので、授業中に指名されることに大変抵抗があります。ただ、将来的には自分の考えを言えるようになってほしいと思っています。ただ、どうしていいか、私たちもわかりません。先生、一緒に考えていただけないでしょうか。」
ポイントは、「一緒に考える」「少しずつ成長していく」という前提を持って話すことです。これは決して弱さではありません。むしろ、保護者としての誠実さや現実感が伝わるアプローチです。
◆子ども自身の「困り感」を大切に
もうひとつ、忘れてはならない大切な視点があります。それは、「主役は子ども」ということ。そして、学校は子ども本人の意思がわかるとサポートしやすくなります。
たとえば、先程の例の話の最後に、子ども自身が「お願いします」と一言だけでも言えたとしたら、学校の受け止め方は大きく変わります。
もちろん、全ての子どもにそれができるわけではありませんし、プレッシャーをかけるべきではありません。でも、「自分はこれが苦手で困っている。(これを困り感と表現することにします)できるようになりたい」という感覚を子ども自身が自覚することで支援は大きな力を発揮し、成長へつながります。逆にこの感覚がないと、せっかくの支援も「なんでこんなことするの?」という、子どもからしたら余計なお世話になってしまうこともあります。本人のできるようになりたいという思いは、とても大切です。
そして、意外かもしれませんが、親の「困り感」と子どもの「困り感」は一致しないこともあります。親は「なんとかしなきゃ」と焦っていても、子ども本人は「別に困っていない」と感じている場合もあります。そのときは、無理に動かすのではなく、「子どもが自分で困っていることに気づくまで待つ」という視点も必要かもしれません。
◆まとめと次回予告
今回は、「どう伝えるか」というテーマで、NG例と望ましい伝え方について具体的にお伝えしました。
大切なのは、
指導(教育)と支援(福祉)の両方の視点を持って
協働の姿勢を忘れず
子どもを中心に据えて
感情的にならず、具体的に伝える
ということです。
次回は、ではその「伝える相手」は誰が適切なのか?
担任の先生?学年主任?それとも養護教諭やスクールカウンセラー?
学校という組織の中で、より効果的に伝えるための“ルート”について、学校内部の構造をふまえてわかりやすくご紹介します。
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2025年8月17日