2学期は学習の山場~広がる勉強格差~
◆夏休み明けに訪れる“勉強のギャップ”
夏休みが終わると、子どもたちは心機一転、新しい気持ちで学校生活に戻ります。しかし同時に、勉強のギャップに直面することも少なくありません。1学期に学んだ内容が十分に定着していないまま夏休みを過ごすと、2学期からの新しい学習に追いつくのが難しくなるのです。
文部科学省の令和5年度「全国学力・学習状況調査」では、**小・中学生の約4人に1人が「授業についていけないと感じることがある」**と回答しています。この割合は学年が上がるほど増加傾向にあります。つまり、夏休み明けは特に「授業についていける子」と「そうでない子」の差が表れやすい時期なのです。
◆学校の授業進度が加速する2学期
2学期は、1年の中でも最も授業時間が多い学期です。運動会や文化祭といった学校行事がある一方で、学習指導要領に沿った主要単元の多くが集中しています。
ベネッセ教育総合研究所が2022年に行った調査では、「1学期の授業が計画より遅れている」と答えた教務主任が41.5%に上りました。つまり、多くの学校が2学期に入ると遅れを取り戻すために授業を加速させる状況にあるのです。
さらに同調査では、「授業についていけない児童生徒がいる」と感じている教員が約7割にのぼり、特に数学と英語でその傾向が強いことが明らかになっています。
◆数学と英語で特に目立つ“つまずき”の理由
2学期に入ると、特に数学と英語で「難しい」「わからない」と感じる生徒が増えます。その背景には、学習指導要領で定められたカリキュラム上の特徴があります。
数学:抽象度が一気に高まる単元が集中
数学は積み重ねが求められる科目です。2学期になると、より抽象的で論理的な思考を必要とする単元が次々と登場します。
- 中1:「比例・反比例」から関数の考え方に入り、一次方程式を学習
- 中2:「一次関数」「合同条件を使った証明」が始まり、論理性が強く求められる
- 中3:「二次方程式」「二次関数」「相似を使った証明」など、応用力が必要になる
高校に進むとさらに難度は上がり、
- 高1:「二次関数」「三角比」「図形と計量」
- 高2:「数列」「ベクトル」「微分積分の基礎」
このように、2学期は関数・証明・方程式の応用といった理解に時間がかかる内容が集中する時期なのです。
英語:文法の複雑化と長文読解の増加
英語もまた、2学期につまずきが目立ちやすい科目です。理由は主に文法の複雑化と長文読解の増加にあります。
- 中1:「過去形」「疑問文」など応用的な文法へ発展
- 中2:「不定詞」「動名詞」「接続詞」など、文構造が複雑化
- 中3:「関係代名詞」「現在完了」など難度の高い文法と、長文読解の増加
高校ではさらに、
- 高1:基礎文法を復習しながら長文精読中心へ
- 高2:「環境」「科学」「社会問題」など抽象的テーマを扱う英文読解
- 高3:評論文・要約・記述問題など入試を意識した実戦的学習
つまり2学期は、文法の習得量が増え、扱う英文も長くなることで、子どもたちの学習負担が急激に高まるのです。
*ここで挙げた単元の時期や内容は、文部科学省が定める学習指導要領(中学校学習指導要領・高等学校学習指導要領)および、主要な教科書会社(東京書籍・啓林館・三省堂など)の配当順序に基づいています。もちろん、各学校によってカリキュラムは異なりますので、一概には言えません。ただし、2学期に「つまずきやすい単元が集中する」という傾向は全国的に共通しています。
◆家庭でできるフォローと第三者サポートの両輪で学びを支える
小さな「復習」と「思い出す習慣」が記憶を強くする
夏休み明けの学びがうまくいかないのは、単に内容が難しいからではありません。学んだことを定着させる習慣が不足していることも大きな要因です。
ドイツの心理学者エビングハウスの忘却曲線によれば、人は学んだ情報の約74%を1日後に忘れ、1週間後には77%忘れるとされています。放置すれば短期間で記憶は失われてしまうのです。
これを防ぐには、短時間の復習を繰り返す間隔反復(spaced repetition)が効果的です。さらに、「覚える」のではなく「思い出す」こと自体が記憶を強化します。小テスト形式で答えさせたり、カードで確認したりするだけでも、理解は大きく深まります。
家庭でできる工夫の例:
- 毎日5~10分の“昨日の学び”復習タイムを習慣化
- 「わからない」を放置しない仕組み(カード・ミニテスト・声かけ)
- 翌日・数日後・1週間後など、間隔をあけた復習サイクル
- 記憶を引き出す声かけ:「昨日のあれ、覚えてる?」「どうしてそうなるの?」
こうした小さな積み重ねが、子どもの自信を引き出し、学習の安定につながります。
◆なぜ親子だけでは対応が難しいのか?そしてどう補うか
とはいえ、家庭だけで「原因を見極め」「適切にフォローする」のは難しい面があります。
- 苦手の根本がわかりづらい:どこでつまずいたのか判断しにくい
- 感情的になりやすい:親子ですと、どうしても感情的になってしまうことがあります
- 客観的評価が難しい:理解度の見極めが不十分なまま進んでしまう
ここで効果を発揮するのが、第三者の学習サポートです。個別指導などでは、
- つまずきの根本原因を客観的に把握し、学習を再設計できる
- 専門家の力を借りることで家庭のフォロー精度が上がる
- 第三者とのやり取りにより、学習意欲が刺激されやすい
研究でも、間隔反復と第三者のフィードバックを組み合わせた学習が習慣定着に最も効果的とされています。
◆まとめ:家庭の工夫と塾のサポートで“差”をカバーしよう
- 忘却を防ぎ学力を定着させるには「少しずつ・繰り返す復習」が基本
- 思い出す練習(retrieval practice)が定着を確実にする
- 「わからない」を放置せず、反復と第三者視点で補うことが重要
- この時期は、家庭と塾が連携して習慣を築く絶好のチャンス
◆教室からのご案内
当教室では、学習内容の定着を支えるために、復習サイクルの設計・第三者による原因分析とフォローを組み合わせた学びを提供しています。
「家庭での復習が続かない」「本当に理解できているのか不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。お子さま一人ひとりのペースに合わせ、ご家庭と連携しながら学習の土台を築いていきます。
2025年8月20日