夏休み明けの不登校について~要因とサポート~
◆夏休み明けは不登校が増える時期
文部科学省の調査によると、不登校が新たに始まる時期として 7〜9月が全体の28.4% を占めています。多くの子どもが夏休み明けに登校の壁を感じているのです(令和4年度調査)。
また、鹿児島大学の研究(2017年、日本教育心理学会で発表)でも、長期休業明けには「学校に行きたくない」という登校回避感情が大きく高まることが確認されています。特に、友人や教師との関係が希薄、自己肯定感が低い子どもほど不安が強くなる傾向があります。さらに、学習意欲が高く心身の調子が良好な子であっても、「うまくやらなきゃ」というプレッシャーが不登校につながることもあるのです。
◆要因
夏休み明けの不登校には、次のような背景が重なり合うケースが多く見られます。
- 友人関係の変化
休暇中にSNSやLINEでの交流が減り、再会に不安を感じる
小さな誤解が心理的負担になりやすい - 生活リズムの乱れ
夜更かしや長時間のゲームで体内時計が崩れる
「行きたいのに体が動かない」という状態になることも - 宿題・学習の不安
課題が終わらず「怒られる」「恥をかく」という思いで登校をためらう - 1学期のトラブルの再燃
友人関係や教室の居心地の悪さが夏休み後に再び浮上する - 複合的な背景
発達特性、SNSでのトラブル、家庭内の困難などが影響する
◆親ができるサポートは何か
- 気持ちを否定しない
「甘えているだけ」と決めつけず、まずは不安を受け止めることが大切です。 - 無理に登校させない
泣きながら登校させると、かえって心の傷が深まり再登校が難しくなるケースがあります。 - 比較を避ける
「〇〇ちゃんは行ってるのに」と言われると自己肯定感が下がり、逆効果になります。 - 学校と連携する
担任やスクールカウンセラーに早めに相談し、家庭だけで抱え込まないことが安心につながりま す。
◆予防と準備のヒント ― 専門家が示す7つの条件
明治学院大学の小野昌彦教授は、不登校を予防するために次の条件を挙げています(2023年)。
- 登校する意味を子どもが理解している
- 休養や通院など適切な休みがある
- 学年相応の学力が備わっている
- 年齢相応の社会性がある
- 十分な体力がある
- 学校への不安や恐怖が少ない
- 安定した生活習慣がある
これらは「家庭でできる環境づくり」の目安になります。夏休み中から少しずつ生活リズムを整えたり、学校の話題をポジティブなことから取り上げたりすることが予防につながります。
◆もちろんケースバイケース
ここまで一般的な傾向や対応のポイントを紹介しましたが、実際には子どもの状況や性格、家庭の環境によって事情は大きく異なります。ある子には有効な方法でも、別の子には逆効果になることも少なくありません。
また、不登校の背景には心理的な要因だけでなく、発達特性や体調、友人関係、家庭の事情などが複雑に絡み合うことがあります。そのため、保護者だけで解決しようとするのは難しい場合が多いのです。
大切なのは、一人で抱え込まないこと。学校の先生、スクールカウンセラー、地域の教育相談機関、場合によっては医療機関など、さまざまなサポートを活用して良いのです。
そして何より、子どもは「人との関わり」の中で少しずつ変化していく存在です。すぐに結果を求めるのではなく、焦らずに粘り強く対応することが必要です。
◆まとめ ― 安心感が再登校への第一歩
夏休み明けの不登校は、多くの子どもが直面する自然な揺らぎです。背景には、生活習慣、人間関係、心理的なプレッシャーなど複数の要因が絡んでいます。
親として大切なのは、子どもの気持ちに寄り添い、焦らずに粘り強く対応すること。そして孤立せず、学校や支援機関と連携しながら長期的な視点で支えていくことです。
学校は人生の一部にすぎません。大人の支えを感じながら、子どもは自分のペースで前へ進む力を取り戻していきます。もし迷いや不安を抱えたときは、地域の教育相談など専門機関を積極的に活用してみてください。それが、子どもと家庭にとって安心できる次の一歩につながるはずです。
◆教育相談という選択肢
もし「どう支えればいいか分からない」「家庭だけでは限界かもしれない」と感じたら、教育相談を利用するのも有効です。専門的な視点から、
- 学習面の不安を軽減するサポート
- 子どもの気持ちに寄り添うカウンセリング的な関わり
- 保護者が安心して相談できる場
を得られることは、親子双方の安心につながります。
一人で抱え込まず、ぜひ教育相談や学習支援の場を活用してください。それが子どもにとっての「次の一歩」につながります。
2025年8月25日