京都生涯学習研究所

教室通信

選ぶ前に知ってほしい!通信制進路のリアル

◆はじめに

通信制高校は、自分のペースで学べる自由度や、多様な背景を持つ生徒を受け入れる柔軟性から、近年ますます注目を集めています。私自身、教育現場や個別指導で多くの通信制高校の生徒さんと関わってきましたが、卒業時点で進路が未決定のままというケースが、全日制高校に比べて多いことを実感しています。
もちろんこれは「失敗」や「遅れ」を意味するものではありません。充電や方向転換のために、あえて時間を取る人もいます。ただし、高校卒業後にどこにもつながらない状態は、社会との接点や生活リズムが途切れやすいリスクを伴うのも事実です。

通信制高校に進学・在籍するにあたっては、この現実を知り、早めに進路準備を進めることが、自分の未来を守る大きな鍵になります。本稿では、通信制高校における進路未定率の現状とその背景、そして対策について考えていきます。

 

◆進路未定率の高さとデメリット

令和6年の文部科学省「学校基本調査」によれば、通信制高校卒業者の進路割合のうち、**進路未定(その他含む)の割合は31.5%**に上ります。この割合の高さは、通信制高校の進路に特有の課題といえるでしょう。

では、進路未決定にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。(予備校で受験準備をするケースは除きます)

 

自力による進路決定の難しさ
大学や専門学校の入試制度は多様化・複雑化しており、自力で全ての手続きを進めるのは大きな負担です。就職活動についても、大卒の就職活動とは異なる流れがあり、知識が不足しているとつまずきやすい面があります。ハローワークのサポートはあるものの、学校の支援が薄い状況は不利といえます。

社会との関わりが途切れる可能性
進路未決定のまま卒業すると、社会との接点が極端に減る場合があります。高校生活で築いた生活リズムが崩れやすく、一度途切れた社会的なつながりを取り戻すことは容易ではありません。

 

◆高校生活がゴールではない

高校卒業は人生のゴールではなく、就職や進学など次のステップにつながる通過点です。もちろん、卒業後に充電期間を持つことも一つの選択ですが、できる限り大学・専門学校・予備校・就職へとスムーズにつながる方がリスクは少なくなります。

 

◆通信制高校の進路決定に必要なこと

積極的な情報収集
通信制高校では進路情報が自然に入ってくる機会が少ないため、自らオープンキャンパスや受験情報にアクセスする姿勢が欠かせません。進路部や担任の先生に積極的に相談しましょう。

早めの準備
大学・専門学校の入試は早期化・多様化が進んでいます。新設学部も多く、選択肢は増えていますが、学校を直接知る機会は限られます。3年生になる前から動くことがポイントです。

自主勉強を続ける
基礎学力や社会人基礎力を磨くことは、進学・就職どちらにも有利です。特に英語・数学・国語の基礎や資格取得(漢検・簿記・PCスキルなど)は履歴書・面接でアピールできる強みになります。

社会経験・体験活動に参加する
アルバイトやボランティアなどの活動は、進路選択のヒントになり、履歴書や面接での実績にもつながります。時間の自由度がある通信制だからこそ、積極的に取り組める分野です。

 

◆まとめ

通信制高校は、自由度の高さという大きな魅力を持つ一方で、「卒業後に進路が未定のまま」になりやすい傾向があります。進路が未定であること自体は必ずしも悪いわけではありませんが、社会とのつながりを失うリスクを考えると、在学中からの準備が非常に重要です。

情報収集・早めの準備・自主勉強・社会経験の積み重ねが、卒業後の選択肢を広げ、スムーズなスタートにつながります。

進路に迷っている方や、準備の進め方が分からない方は、ぜひお気軽にご相談ください。教育現場での経験を活かし、あなたの状況に合わせたサポートをいたします。

2025年10月2日

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