京都生涯学習研究所

教室通信

新学期では不登校は解消しない!?

◆はじめに

「進級したら、また頑張ってほしい」
「新しいクラスで、気持ちを入れ替えてほしい」

そんな思いを持つ保護者の方は多いと思います。それは当然の気持ちです。また、不登校の生徒本人も新しい学年からはと奮起します。
しかしながら、4月という時期に「子どもが張り切りすぎる」ことは、不登校の子にとって想像以上に大変であり、期待通りにはいかないこともあります。また、学校側もこの時期は手厚い支援がしにくい時期でもあります。
この記事では、4月に頑張りすぎず、スモールステップで次につなげられるためのヒントをご紹介します。

  

◆「新学期リセット」は存在しない!?

文部科学省が公表した不登校要因分析調査によれば、
前年度から不登校が継続している割合は、小学校:42.3% 中学校:53.0%です。
(文部科学省 令和4年度調査)

つまり、中学生の不登校の半数以上は、新学期になっても状況が変わっていません。
「新しい環境で気持ちが切り替わる」という期待は、残念ながら半数以上の家庭では実現していないというのが現実です。

ですので、新しい学年ですぐに登校できなかったとしても、決して珍しいことではありませんし、自身を卑下する必要もありません。

  

◆「過剰適応」という心理的リスク——いい子ほど危ない

また、無理に4月に頑張りすぎると、こんなリスクが生じることもあります。それが、過剰適応です。

過剰適応とは、自分の本来の感情や欲求を抑え込みながら、外部の期待や環境に過度に合わせようとする状態のことです。
これは、「いい子」「優等生」に見える子どもほど、このリスクを抱えやすいとされています。

親や先生の期待を敏感に読み取り、「頑張らなければ」「期待に応えなければ」という気持ちで無理をします。そして、ある日突然、「もう行けない」と糸が切れたように動けなくなることがあります。
過剰適応は、結果として登校が再び難しくなる要因の一つになることが指摘されています。

一見「元気そうに見えた」だけに、周囲はその落差に戸惑います。でも、本人の中では徐々に限界が積み重なっていたのです。

  

◆学校側も4月はサポートしにくい

◉ 新担任は「全員を把握するのに必死」な時期

4月、新しい担任の先生は、クラス全員(30〜35人)を同時に把握することに精いっぱいです。行事の準備、保護者への挨拶、校務の引き継ぎ、教室環境の整備——やることは無数にあります。

この状況で、不登校の子への個別対応に多くの時間が割けるようになるのは、GW前後ぐらいになることが多いでしょう。学校側に悪意があるわけではなく、構造上そうなります。

  

◉ 「引き継ぎ」は思ったほど伝わっていない

不登校の子を持つ保護者からよく聞く声があります。
「去年の担任に伝えたことが、新しい担任に全然伝わっていなかった」というものです。

これは、その担任が怠慢なのではありません。

学校現場の現実
・3月末〜4月初旬は人事異動・新年度準備が重なる最繁忙期
・異動した前担任への連絡は「文書だけが頼り」になる
・新担任が異動者である場合、学校の文化そのものを把握している最中
・4月中に新担任に詳しく聞ける状況は稀

もちろん、しっかりとした引き継ぎが行われることもありますが、100%伝わっているとは限りません。

  

◆保護者ができることは何か

この時期に限らず、不登校全般において大切なことは、できることを一つ一つ増やしていくことです。

例えば、
・朝決まった時間に起きることができる
・自分で朝の支度ができる
・2日に1回、サポートルームのような別室登校ができる

いきなり教室で授業を6時間受けるというのは、とてもエネルギーが必要なことです。これは想像以上に大変です。いきなり大きな目標を達成しようとすると、前述のような過剰適応など無理が生じてしまいます。

ですので、ちょっとしたことでも一つ一つ積み重ねていくこと。そして、小さなことが続くだけでも大きな進歩です。

スモールステップで、できることに目を向ける。

  

◆まとめ

新学期になっても、すぐに状況が変わらないのは決して珍しいことではありません。

張り切りすぎるよりも、無理なく続けられる一歩を大切にしましょう。

朝起きられた。
身支度ができた。
別室に行けた。

そんな小さな前進の積み重ねが、やがて大きな力になります。

焦らなくて大丈夫。
比べなくて大丈夫。

スモールステップで、確実に。

2026年3月5日

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