京都生涯学習研究所

教室通信

入学前相談 “言う・言わない”より大切なこと

◆はじめに

新しい学校への進学が決まると、保護者の方から
「入学前に、今までのことを学校に伝えた方がいいでしょうか」
という相談をお受けします。

不登校の経験があったお子さん、発達の特性があるお子さん、前の学校でトラブルがあったお子さん……。

「伝えなくてよかったのに、言ったばかりに印象が悪くなってしまったら」
「言わないまま入学させて、また同じことになったら」

そんな両方の不安が頭をよぎり、どうすればいいかわからなくなってしまいます。

その迷いはとても自然なことですし、どちらの心配も根拠のある心配です。ただ、「言うべきか言わないべきか」よりも大事なのは、「どのタイミングで、誰に、何を、どう伝えるか」という点です。

  

「迷っているなら、伝えておく」

迷っているということは、何か引き継いでほしいことがある、あるいは新しい学校に知っておいてほしい事情があるということです。その場合、基本的には伝えておく方がよいと筆者は考えています。

学校側は、入学してくる生徒のことをほぼ何も知りません。白紙の状態で4月を迎えます。そこで何も情報がなければ、何か起きてから動くしかありません。しかし、事前に情報があれば、担任の先生も最初から「この子のことは少し気をかけておこう」という準備ができます。

ただし、伝えた内容がどう受け取られるかは、伝え方によって大きく変わります。これが最も重要です。

  

誰に伝えればいいのか ― タイミング別の動き方

 

■ 4月1日以降であれば、進学先の学校に直接連絡してよい

4月1日を過ぎると、その学校に入学する生徒として正式に扱われます。入学式前であっても、学校に直接電話してかまいません。

この時期になると、担任や学年主任も決まっています。電話口では、
「4月から入学する○○の保護者です。新年度を迎えるにあたり、ご相談・お伝えしたいことがあるのですが、お時間をいただけますか」
と伝えれば、多くの場合は対応してもらえます。

 

■ 3月中であれば、今の学校の担任に相談するのが丁寧

まだ3月の間は、現在在籍している小学校・中学校の担任の先生に、まず相談するのがスムーズです。

「進学先の学校に直接相談・連絡しても大丈夫でしょうか。それとも学校を通していただいた方がよいでしょうか」

と聞いてみてください。

学校によっては、学校間で情報を引き継ぐルートがあります。担任の先生に一声かけることで、連携がスムーズになることもあります。

ただし、今の学校との関係がうまくいっていない場合や、学校に知られたくない事情がある場合は、4月以降に進学先へ直接連絡する方がよいでしょう。

 

■ 4月以降の方が動きやすい

4月に入ると、学校側も新年度体制になっています。担任も決まり、学年体制も整っているため、「どの先生に話すか」が明確です。

急ぎの事情がなければ、4月以降に進学先へ連絡するのが最もスムーズなタイミングです。

 

◆伝え方が、一番大切

ここが最も重要な部分です。どれだけ丁寧なタイミングで連絡しても、伝え方を間違えると逆効果になることがあります。

 

① 伝えたい内容を客観的に整理する

不登校であれば、

  • いつごろから
  • どんなきっかけで
  • どういった対応をしてきたか
  • 今の状態はどうか
  • 本人はどうしたいと思っているか
  • 保護者としての希望は何か

を、できるだけ客観的な事実に基づいて整理しておきましょう。

特に本人の気持ちや希望は、学校側にとっても重要な情報です。

「本人は新しいクラスに期待している」
「行事への参加は慎重に見守ってほしいと本人が言っている」

など、本人の声を添えて伝えると、担任の先生も関わり方を具体的にイメージしやすくなります。

 

② 担任や特定の先生への個人的な批判は避ける

前の学校でトラブルがあった場合、「あの先生の対応が問題でした」という言い方になりがちです。

しかし、それを新しい学校に伝えても確認のしようがありませんし、
「この保護者はクレームをつけやすい人かもしれない」
と警戒されてしまうリスクがあります。

伝えるなら、出来事の事実と子どもへの影響を中心に整理するのが適切です。

 

③ 情報や要望を詰め込みすぎない

入学前の段階では、学校はまだその子のことをほとんど知りません。その状態で大量の情報や要望を伝えられると、「何から対応すればよいか」が見えにくくなります。

また、要望が多すぎると「この家庭は対応が難しそうだ」という印象になり、本来協力的に動いてくれるはずの先生が身構えてしまう可能性もあります。

まずは一番伝えたいことを1〜2点に絞る
詳しい話は入学後に改めて時間をとってもらうのが現実的です。

「入学してから子どもの様子を見て、あらためてご相談させてください」

と添えると、話し合いの入口が開きやすくなります。

 

◆個別の指導計画(個別支援計画)の引き継ぎについて

発達の特性などにより、前の学校で個別の指導計画や支援計画が作成されていた場合、学期末に「次の学校へ引き継ぎますか」と確認されることがあります。特段の事情がない限り、引き継ぐことを勧めます。

理由は2つあります。

1つ目は、新しい学校が必要な配慮を最初から把握できるため、支援がスムーズになるからです。

2つ目は、配慮の実績が積み重なることで、高校や大学入試における**合理的配慮申請(例:試験時間延長など)**の際に参考資料となる場合があるからです。

記録は早い段階からつながっている方が、後々の選択肢が広がります。

 

◆まとめ

「入学前に相談するかどうか」に正解はありません。

しかし、迷っているなら動いてみることを勧めます。大切なのは、「これだけはわかってほしい」という一点を、落ち着いた言葉で伝えることです。

それだけで、新しい学校との関係は大きく変わる可能性があります。

新しい環境への不安は、お子さんも保護者の方も同じように感じているものです。その不安を少しでも減らすための最初の一歩として、この記事が役に立てば幸いです。

2026年2月26日

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